今までの勤めた会社の中でもトップクラスに忙しい会社ではありましたが、周囲の人たちの優しさと言うかに触れながら何とか仕事にも慣れてきた頃の昼食時です。
『あ、今度健康診断ですね』
『ああ、もうそんな季節かよ』
と吉田先輩と山下氏が話をしています。
吉田先輩は仕事の内容は違いますが頼りになる人で入社してからこっち、色々気も使ってくださっています。
そして、入社日に言いがかりを付けてきた山下氏と言えば、仕事の内容がワタクシとは全く違うのでわかりませんが残業時間が100時間を目指すワタクシとは違い日々、定時で帰っていくのです。
やはりこの男は出来る人間なのか?と考えが浮かんできてしまいます。
そんな時…
『なあ、君は身長何センチあるの?君はいい体してるし、
去年170センチだった俺よりも背が大きいから180…170後半はあるだろう?』
…何を言い出すんだこの男は?
ワタクシの身長はこの十数年間173センチ前後で止まってしまったぞ。
確かにこの男の身長が170センチというのであれば間違いなくワタクシの身長は177センチ前後だろう。
だがご生憎様だが、ワタクシの身長はあっても173センチ前後。
そうなるとこの男の身長は166センチ前後と言う事になる。
しかし、この男はこう言いよったのです。
『170センチの俺』
『俺は、165くらいかな、もう高校で止まっちゃってさ』 吉田先輩が自己申告状態で身長を教えてくれている。
吉田先輩とほぼ同じ身長なのに170センチ?
ちょっとまて、吉田先輩は165センチと自己申告をしているぞ?
やはりおかしい。
どちらかが嘘をついていることになる。
だがしかし、 どう見ても170センチは無い。
170センチはワタクシである。 結果としてはこの男は嘘をついている。
一瞬、人間関係とかも考えたものの、どうせ嘘に付き合っても数日後には健康診断で嘘が露呈されるのである。
ならば今、言ってあげるのが優しさではなかろうか?
『え?ワタクシですか?173センチ前後ですよ。まあ、測り方とかやった施設とかで誤差はあるでしょうが毎回そのくらいですよ。』
さて、この言葉に山下氏は何と答えるのであろうか?期待してしまうワタクシは度肝を抜かれます。
『嘘をつくな。俺が170センチだ!!』
嘘!!?
ワタクシが嘘つき!?
一体全体この男は何を言い出すのであろうか?
一瞬、入社間もないワタクシが被ってきた猫を捨ててしまい
『嘘なんてつきません』
と言い返してしまいます。
ああ、好青年のイメージが壊れる。
『わかった!君は嘘をついてない。測った人間が間違えて居たんだよ。俺は170センチだもの』
即座に折れた!?
…それにしてもこの男、170センチに夢か憧れがあるのであろうか?
途中でトイレに立ち上がる山下氏。
彼が居なくなった隙に吉田先輩が
『ありがとう!!』
はい?何を感謝されているんだろうか?
よく意味がわかりません。
『君が着てくれてよかったよ。
アイツさぁ、今までも自分は170センチだって言い張っていたんだよ。
俺が何回違うって指摘しても駄目だったけど
リアルに170センチが現れればアイツも諦めるだろう』
…ああ、そう言う事ですか。
とりあえず、これで山下氏が出来るか出来ぬかはいざ知らず嘘つきという事はわかった。
…はて?ふと疑問に思ったのだがこの人たちは何歳なんだろう?
丁度山下氏も戻ってきたので聞いてみると。
吉田先輩…ワタクシの10歳上。
山下氏…ワタクシの親の2歳上。
『え!?見えないですね!!』
と若く見える吉田先輩と、我が親は決して出来た人間ではないと思うが、親より2つも年齢が上でこの有様の山下氏に対して驚きのコメントを返してしまいました。
『そんなこと無いよ!!』
『いやぁ、そうか?うはははは…』
『見えないですよ。』
段々とワタクシは気づき始めました。
厄介なだけでは済まない事に…
後日談
『山下さん、健康診断どうでした?』
『あ?健康だよ?』
『君は?』
『何とか健康でした。』 『身長は?』
ああ、そういうことですか。 『172.5センチでした。』
『縮んだのかな?』 『縮んだみたいですね、まあ、測り方もあるんでしょうけど』
『山下さんは?』
『164センチだったよ。おかしいなぁ、
学生時代は170を超えて居たんだけどなぁ、縮んだなこれは』
…あんた、去年って言ってたよなぁ?
下手な嘘はつくべきではないと教えていただきました。 |