先生のやる気と悲しい現実。
 

先生が珍しくやる気になり、吉田先輩やその他の方々にも意気揚々と新しい機械について知っていることを何べんも何べんも、毎日毎日、イヤというほど同じ事を話している日常が過ぎていた頃…

メーカーとの導入日や、導入前に解消しておきたい作業内容の話し合いが設けられました。

 

しかし予定された時間は定時を15分過ぎた時刻。

 

「あ?おいおい、何で定時中にやらないんだ?」

「ワタクシもそうですが、社長も上司様も定時中は忙し過ぎますので出来ません。当然話し合いの後もいつも通り残業です。」

「あ?俺は定時内のほうがいいんだよ!!」

「…なんでですか?お仕事は?」

「あ?仕事なんて無いんだよ!
それよりその日は飲み会だから早く帰りたいんだよ、
その話し合いは何時間かかるんだよ!!」

「さぁ?上司様が決めたので上司様に伺ってはいかがですか?」

「あ?お前が聞いておけよ」

…何故だろう、上司様と先生はお互いに接点を潰したがっている

「いえ、ワタクシは何時になっても構いませんし、切り上げたせいで導入後に問題が出ても困るじゃないですか?でしたら遅くなってもきっちり話し合うべきです。」

「あ?それだと飲み会が!」

「飲み会がどうかしましたか?」
と社長登場。

「あ、いや別に…」

これはチャンスだと思いました。

「今度の話し合いの事で話していました。山下さんは終わる時間が気になっているそうですよ」

「またいつもの飲み会ですか?
あなたはまだそんな事を言っているんですか?
機械が入って忙しくなったらそんな事も言ってられませんよ」

「あ、はぁ…」

すでにヤル気より日常の飲み会が勝利している前途多難な先生です。
そして、話し合い当日、

「出力機の運用には専用のPCと専用のソフトを使いますが、前段階まではお使いのパソコンからプリンタを出力機に合わせるだけですので、今までのお使いのソフトから何の変更もなくなります。」

「ここまで聞いて君(ワタクシ)は何か質問はあるか?」

「あ、はい、専用のPCですがOSは何が入りますか?windowsですか?」

「はいサーバー用のOSですがWindowsです。パソコン自体はOSさえ動く環境でしたら何を使っても問題はありません。ですので普段お使いの感覚で使用できると思います。普段はMacですか?Windowsですか?」

「両方です。」

「でしたら問題なく使えますよ」

「わかりました」

「じゃあ、担当の山下さんはここまで聞いて何か聞きたいことある?」
と社長のキラーパスが先生に入ります。

 

「あ、じゃあ。そのパソコンは何処のメーカーでメモリやハードディスクはどれだけ入っているんですか?」
社長、キラーパスではなくオウンゴールですよ。

「はい?………あ、と…ですので先程も申したとおり、OSさえ動けば何でもよろしいのですが…特にそれ以上の使用用途はお考えですか?」
と困ったメーカーさんはワタクシへパス。
ちょっと、待ってください。
そんな無茶振り困ります。

「えーと、ワタクシは伺っておりませんが上司や社長と山下で話し合っていて希望があったのかもしれませんね。どうなのですか?」
ワタクシとしては及第点の受け答えだと思います。

「俺は何も話し合っていない」

「俺も」

早々に離脱する上司様と社長様。
そうなるとこの発言は先生の思いつきということになり、
オウンゴールされたボールがまた先生の下へいきます。

「あ?ただ気になっただけ」

 

 

………凍りつく場。

 

「くすっ…」

 

メーカーさんの一人から失笑が漏れます。
ああ、バカにされた気がする。

その笑ったメーカーがこれ見よがしに余計な提案をしてきます。

「もし、運用以外に使用用途があってハイスペックを望むのであればうちとしてはお金さえ頂戴できましたらいくらでもご用意いたしますよ」

 

…必要ないですよ。

「あ、そうですか?」

バカー!!先生のバカー!!
何か嬉しそうに勘違いした先生が反応します。

出力機用のPCであって先生用のPCではないのに、自分のPCがハイスペックになると勘違いした先生の目は輝いています。

勘弁、マジ勘弁。

 

しかし、わが社のツートップ、社長様と上司様は無駄と浪費を嫌うので、

「いりません」

「一番安いので結構です」

即座に意見を叩き潰します。

 

 

こんな感じの話し合いが数回行われ、ついに導入の日。

 

修羅場と導入日が被ってしまい、先生以外の人間が機械に立ち会えないと言う状況です。

「君だけでも見ててくれないかな?」

と上司様がワタクシに提案。

あんた、それってどうよ?君だけって先生居るし。それに何?さらに残業しろってか?

当然丁重にお断りをします。

朝から始めた仕事も、夕方になり終わりかけた頃、機械も無事に初回起動が完了し本稼動をかねたテスト運用が行われます。

一応この日の為に先にもらったマニュアルにて予習をしておいたワタクシ。
この準備が無駄になるか必要となるか…

「では操作をしてみます。」
とメーカーさん

やはりというか丁度と言うか…

「ちょっと待ってください、ウチのものにやらせて見せてください」

と社長の一言があります。
当然、社長初の発言ですので矛先は先生に向いています。

「さぁ、山下さん、やってみてください」

「え?俺ですか?」

「そうですよ、あなたが管理・運用を行う機械ですよ。
それに先にマニュアルが届いていたんですから出来ますよね」

「あ?見ていたんですけどわからなかったんです。」

「それでもやってください」

と中々引き下がらない社長。
しかし、ワタクシの読みどおりならば…

「社長!山下さんはわからないって言ってるんだから、
彼に代わってもらいましょう」

ほらきた。

上司様が先生との接点を潰しながらコチラに話を振ってきます。

「え!?」

…驚く先生。

「君はマニュアル読んだの?」

「ええ、まあ」

「出来る?」

「多分ですが」

「ほらね社長!!彼にやってもらえばいいんですよ!」

上司様、あんたその「やってもらえ」は何処から何処までを指しているんだね?
ぐだぐだになりかけた頃…

 

 

 

「くすっ…」

 

 

またメーカーの一人が笑います。
先日も笑った奴です。

何なんだろうか?

正直この件で頭にきましたので機械操作を始める私。
一度目は及第点と言った感じです。

この結果に満足の先生を抜かす一同。

先生といえば…

「ちっ」

舌打ちしています。
マニュアルが届いたときに就業時間内全部使って読んでいてワタクシには貸そうともしなかったんだけどなぁ…

そういう事しておきながら土壇場で逃げるわ舌打ちするわってあーた…、どれだけなの?
まあ、シャイなのかも知れないよな。と先生を擁護してしまうワタクシ。

この頃は何もわかっていないよなぁ…

 

その後、メンテナンスの説明になると、

「これなら山下さんもできますよね!お願いしますね!」

と上司様。
…上司様の中で先生は掃除夫か何かなんですね。

 

 

そして、紙交換の話になります。

この時は社長が

「やる君たちがよく見ていた方がいい」

とワタクシと先生に言いますが、

 

 

先生が見事にブロック。

 

何処に移動しても必ずワタクシの前に先生が立ちはだかります。

妙な光景です。

コレに気づいたメーカーがすごい目でコチラを見ています。

頭にきたのと、アホらしくなったことでワタクシは離脱。
それに気づいた上司様が、

「君は何をやっているんだい?見ないのかい?」

と聞いてくるので

「ああ、山下さんや皆さんで見えないですし無理に邪魔をしなくても最前列で見ている山下さんが居ますのでわからなくなれば山下さんがやってくれると思います。」

「じゃあ、退くよ?」

と上司様。

…皆に聞こえていてもガンとして無視を続ける先生。

協力とかあり得なそうです。

やはり先程ワタクシが操作したことが気に食わなかったようですが、
先にチャンスをもらったあなたがやらんかったのよね。

それって、逆恨みじゃない?
ちょっと先生の行動に頭にきていたので…

「あ、いいです。マニュアルも読んでいますし、十分に出来ると確信もしています。」

と一蹴。

 

凍りついた中一通りの説明が終了し、メーカーさんはお帰りに。

社長や上司様、ワタクシ達は今後の運用と管理の話し合いを始めます。
やはりメンテナンスと基本作業は先生になり、特殊な作業に関してはワタクシに回ってくることになりました。

うーん、まあ、いいけど。

その後は先程の機械操作に関して上司様と社長と話していると妙な違和感を感じます。

 

あれ?先生は何処?

これに気づいた社長が

「山下さんは?」

とはじめ、

「山下さーん、山下さーん」

と上司様が社内を探し始めます。

その時、時計を見ると定時を回っています。

 

…ああ、帰りやがったな。
そう確信をしていると…

 

 

「あ!!」

 

上司様の声が聞こえます。
戻ってきた上司様

「タイムカード見たら山下さん定時丁度で退勤してる。」

ほらね?

 

翌営業日…

新品の機械に吉田先輩達が集まります。

「これが新しい機械かぁ、どうだった?」

と先輩がワタクシに聞いてきます。
そこに今日も遅刻で登場の先生が割り込んできます。

「あ?ああ、使ってみたけど良かったよこれなら綺麗に使えるよ」

…使ったのはワタクシじゃ。
その後も先生の薀蓄が止まりません。

そこに登場する社長様、社長様は先生を問い詰め始めます。

「何で勝手に帰っちゃうんですか?」

「あ?いや、もう終わったと思いましたので」

「何言ってるんですか?
彼と私達が話し合っていたじゃないですか?」

「ああ、別の仕事の話だと思いました。
とりあえず用が無いので帰りました。」

「何言ってるんですか?
あなたが担当する機械の話ですよ勝手な真似しないでください」

「あぁ、はい。」

…この会話で大体を察知した皆様。

先程の先生の薀蓄も受け売りか…と散り散りになりかけた時…

 

上司様が登場です。

「お、みんな集まってますね。
じゃあ、早速皆さんの前で使ってみましょうか!」

丁度、今まで外注に出していた仕事があるのでデモンストレーションよろしくに操作することになります。
最初に来ていた仕事は用紙交換の必要もなく普通に出力が出来ます。

しかし、社長のご指名は先日の失敗がある先生ではなくワタクシ。
これにはまた先生が腹を立てて怒りをあらわにします。

でも使えないんじゃ仕方ないでしょ?

そして2件目の仕事は用紙交換が必要になります。
それに関しては行く手を遮った先生が息を吹き返し

「あ、これは俺がやります!」

と意気込みます。

頑張れ、先生。

 

 

 

ガゴッ!

 

 

 

ん?何か異音が…先日の用紙交換の際にはそんな音が出ていなかったんだが…。

 

「あ?あれっ?あれっ?あれっ?」

先生が「あれあれ」言い始めます。

 

ベゴッ!!!

「おかしいな?あれ?あれ?おかしいなぁ」

 

バキン!!

「あれ?」

 

 

ボグッ!!!!

 

「おかしいな?」

 

…こんなやり取りが続く事数分。

 

 

「あ、あれ?あれ?あ?ああ?出来た?」

 

ようやく用紙交換が終わった先生。
でも、 出来た?ってイントネーションおかしくね?

 

「あ、ああ、これでですね。
用紙の認識をですね、行わすんです。
いいですか?ようするに機械に用紙の認識をさせるんです」

と先生。
何を要したのであろうか?
同じ事を2度言っただけだと思うのだが…

そして認識のスイッチを入れた瞬間。

 

 

 

 

ピーーーーーーーーーーーーーーー。

 

すごく不吉な音が響きます。
コレはもしや?

 

「何かエラーって出てますよ山下さん。」

 

その言葉に「あれ?あれ?おかしいな?」と言いながら首をかしげてドジっ娘風のリアクションを取る50過ぎの中年先生。
気持ち悪いです。

「何やってるんですか!直してください!!」

いきなりの故障に立腹する社長。

「直してくださいってわからないものはわかりませんよ、
どうにもなりません」

平気で言い返す先生。

わからないというか、あの異音と先生のミスで機械が壊れたんじゃないのか?と周囲から話が出始めます。

もう、全員仕事どころではありません。
どうすればいいのか?と話していると…

 

またも一人姿が見えません。

 

 

 

 

 

周りを見渡すと…

 

先生。離れたところでタバコを吸って見物しています。

 

 

壊したくせに何をしでかしとるんじゃ?

先生は当てにならんと言うことでマニュアルを渡してくる上司様。
ああ、そうッスね。

 

ワタクシ、補助ですものね。

原因を探すとマニュアルには【致命的なエラー、メーカーへ連絡してください】と記載されています。

命に到るエラーっすか…

「ああ、これはメーカー呼ばないと無理ですね。」

と言った所で…

「あ、俺もそう思う」

と先生登場。
お前何もしないでタバコ吸ってただろうが?

初日から破壊という奇跡を見せてくれた先生。

メーカーに聞けば原因は用紙交換の際にガンガンやりすぎて配線が緩んでしまったとの事。
それにしてもメーカーさん。

どうしてワタクシに報告にくるのかしら?

「あ、いえ。あの方(先生)に説明しても通じないですし、
結構機械内部に傷が入っていたので扱い方を聞きましたが何もしていないと言うので…」

 

ああ、それで補助に来たと。

 

 

補助。

 

それは悪魔の言葉であると思う。

 

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